クルマに装着すれば燃費やタイヤ摩耗が改善する自動アライメント技術、豪州で開発中

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Doftek

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オーストラリアのスタートアップDoftekが、自動車のホイールアライメントを走行中に自動調整し、その時々で最適な走行を実現するActive Wheel Alignment System(AWAS)を開発しました。現在は自動車メーカーへの販売を計画しています。このシステムを装着した自動車は、4つの車輪の向きや取り付け角度を自動的に調整し、燃費やタイヤの摩耗が軽減しさらにハンドリング性能も向上するとのこと。

自動車が安定して走るためには、4本のタイヤが適切に接地している必要があります。でなければエンジンやモーターからの駆動力を効率よく路面に伝えたり、直進やカーブを曲がるときの安定性を確保できません。この各タイヤをあらゆる状況で上手く機能するようにするのがホイールアライメントと呼ばれる調整作業です。

ホイールアライメントの要素としては、前輪および後輪の左右への向きを調整し直進安定性を高めたり偏摩耗を防止するトー角、タイヤを直立でなくやや角度をつけて接地させることでコーナリング性能を向上させるキャンバー角、操舵輪を前後に傾斜させて車体に取り付けることでコーナリングから直進への復元力をつけるキャスター角といった種類があり、これらを適切なバランスで調整することで、自動車が走るときの総合的な安定性を高めます。したがって、通常はこれらの調整を変更することはありません。

ただ、自動車が直進しているとき、カーブを曲がっているとき、ブレーキをかけているときといったシチュエーション単位で随時アライメントを最適化できれば、もっと自動車の安定性や走行時のタイヤへの負担を減らすことができるはず。それを実現するのがDoftekのAWASです。

Doftekはジェフ・ロジャース氏とプリシラ・ロジャース氏の夫婦が共同で創業、ビジネスパートナーのポール・ドウイ氏がAWAS開発に携わっています。AWASはマクファーソンストラット、ダブルウィッシュボーン、マルチリンクなど既存のサスペンションシステム、および後輪操舵システムと完全に互換性があり、特別な改造などは必要ありません。

このシステムでは既存のサスペンションマウントを電気機械式のキャンバーデバイスに交換し、トー調整デバイスをタイロッド(操舵輪を左右に動かすロッド)に取り付け、自動車の制御装置(ECU)にAWAS用のECUを接続して使用します。デバイスを使わない状態のために、通常のホイールアライメントも行うことができます。

その効果は、走行中の自動車のトー、キャンバー、キャスターを電子制御で動的に調整し、タイヤの転がり抵抗と摩耗をそれぞれ10%削減し、ハンドリングパフォーマンスを少なくとも15%改善できるとのこと。開発中のバージョン2では、ハンドリングの改善は29%まで引き上げられるとのことです。

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ロジャース氏によれば、AWASの効果が最も顕著に表れるのはキャンバー調整でタイヤの転がり抵抗を減らして燃費効果が高まる高速道路の走行だそう。またAWASはタイヤの摩擦で生じるノイズや振動などを低減するため乗り心地も改善されるとしています。

初期バージョンのAWASでは、ホイールごとのキャンバー角とキャスター角は左右同じ角度で調整していたものの、現在開発中のバージョン2では左右も個別にパラメーターを変更でき、たとえばコーナリング中に内側のホイールのキャンバー角を強くしてよりタイヤのグリップを改善できるとロジャース氏は述べています。

またタイヤの温度も各ホイールで均一にすることでホイールごとの摩耗の偏りをなくせると説明。タイヤへの負担を均一化することで最終的にタイヤを使い切るまで長持ちさせられるようになります。

Doftekは現在、オーストラリア製造業界全体のイノベーション、生産性・競争力向上を推進するNPO、Advanced Manufacturing Growth Center(AMGC)の財政的支援を得て、バージョン2の開発に取り組んでいます。開発車には初期バージョンがアウディTT RS、バージョン2はメルセデスAMG GT Sを使用。ちょっと贅沢なんじゃないのと言いたくなる車種選択ですが、これはAWASの搭載が最も求められるであろう高級車および高性能車をターゲットとして開発しているため。走行性能を追求するこうしたモデルこそ、AWASの搭載が求められると言えるでしょう。

そして、高級・高性能車の次に目標とするのが電気自動車と自動運転車。電気自動車はタイヤの転がり抵抗を削減するだけでバッテリーによる航続距離が伸びることが期待でき、AWASによる10%の低減は非常に大きな魅力となるはず。また高度に自動制御化される自動運転車との組み合わせも相性が良いと考えられます。

Doftekは「この技術は自動車メーカーに次世代のパフォーマンス向上を提供できることを示しています。AMGCからの支援により、欧州や日本を含むグローバル市場への開発と商品化の取り組みを加速させることができました」と述べています。

なお、AWASの概念はそれほど新しいものではなく、一部の自動車メーカーは2005年頃からその開発に取り組んでいます。しかしロジャース氏によればそれらのシステムは効果で重く、既存のサスペンションレイアウトに組み込むことができないとのこと。DoftekのAWASの場合はホイールごとに1kgほどの重量増加しかないのも大きな武器と言えるでしょう。

ちなみに、AWASとは異なるもののF1世界選手権に参戦しているメルセデスAMG F1チームは、2020年シーズンに使用しているマシン、メルセデスAMG・F1 W11 EQ Performanceに、Dual Axis Steering(DAS)と呼ばれるシステムを搭載しています。DASの詳細は明かされていないものの、走行中にドライバーがステアリングを前後に押し引きすることでフロントタイヤのトーイン/トーアウトを調整、タイヤの転がり抵抗(および空気抵抗)を減らしてトップスピードを稼ぎ、さらに摩耗を減らす効果があると言われています。DASはF1ドライバーが自分で操作するものの、DoftekのAWASは市販車でそれを自動処理してくれる高度な技術とも言えそうです。

source:Doftek, FOX News

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